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マンネリ防止策(ローション編)

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王泥喜は、いつものように牙琉兄弟のマンションに泊まりに来た。
手には、小さな紙袋をぶら下げている。
「王泥喜君。それは?」
「ん?マンネリ防止です。」
あっけらかんと答える王泥喜。一方、二人はその言葉に戦慄していた。
普段から何をしてくるかわからない王泥喜の行為は、こういうとき本当に恐ろしい方向に行く。
今から与えられる大きな快感に期待しながらも、同時に恐怖していた。
「…なにを、するんです?」
「コスプレ、とか?あと、オモチャとか。」
「いえ、今回は趣向を変えてみました。」
王泥喜が小さな紙袋から、3つのプラスチック容器を取り出す。
3つともデザインは全く違ったが、それが何かはなんとなく予想が付いた。
「王泥喜君、これは…」
「ひょっとして…」
「ローションです。」
その容器をそれぞれ見比べながら尋ねる二人に、王泥喜はばっさり切り捨てる。
「なんで3つもあるの?」
響也は3つのローションのうちの一つ、オレンジ色に花のマークが書かれた一見化粧品のような物を手に取る。
「その3つにはそれぞれ、異なった特徴があるんですよ。」
王泥喜が持ってきたのは、響也が持っているものの他に、見た目は市販のものと変わらないものと、真っ白なものがある。
「まず検事が持ってるそれは、食べられます。」
「「は!?」」
霧人も、響也の横に付きまじまじとボトルを眺め始める。
後ろを見ると、確かに賞味期限が明記されていた。
「舐めてみてください。おいしいですよ。」
2人は顔を見合わせ、半信半疑でふたを開ける。
途端に、二人の鼻を甘い匂いが掠める。
「あ、いい匂い…」
「蜂蜜、でしょうか…」
まず響也が少しだけ指に出し、恐る恐る舌を這わせる。
「…っ!甘っ!」
「ちょ、私も!…あっま…」
単品だとさすがに甘みが強いのか、霧人は小さく咳き込んでいる。
「でも、これはいいと思うんです。舐めて処理すればいいから楽だし。」
じゃあつぎはこれ、と王泥喜が出したのは、市販のものとなんら変わらないほう。しかし、パッケージがピンク色で女性向けといった感じだ。
「あ、これ先生が嬉しいかも。」
「私?」
「これ、同じようなの薬局とかで売ってるよね。違うんだ。」
王泥喜は霧人の頬をするっと掌で撫でた。
「これ使うと、お肌に磨きがかかりますよ。」
「え?」
どうやら、アンチエイジング成分の入ったローションらしい。
他にも肌に優しい成分が含まれているので、主に女性が使うものだ。
「先生そういうの気にするからいいかなぁって…」
「王泥喜君、私を気遣って…」
(でもそれって、どっちかっていうと下半身じゃなくて顔に塗ったほうが…)
響也は喉まで出かかったがやめた。
「オデコ君この白いのは…」
響也は残り一つの真っ白のボトルのラベルを見て、思わず口をつぐむ。
霧人も同じく言葉を失ってしまった。
「ああ、それは半分ネタで買ったものですから…」
王泥喜も、若干戸惑った顔で頭をかいている。
それは、真っ白な容器に、黒の字で名前が書かれていた。
「…世の中広いねぇ…」
「精液…ローション…」
入れ物に、ハッキリ書かれた黒い文字。
さっきまでの甘い空気が一気に冷えた気がする。
「まぁ、触るだけでも…」
「あ、あぁ…」
「そう、ですね…」
響也が恐る恐る少しだけ手に取る。
「「「!!!」」」
一緒にみていた王泥喜まで息を飲んだ。
「今って、こんなに忠実に再現できるんだね…」
「…色が、めちゃくちゃリアルですね…」
「うーん…」
響也の手に出されたものが、本当にローションなのかを疑うリアルさ。
「匂い付きもありましたけど、そっちにしてよかったです…」
「オデコ君、ティッシュ取って。手がぬるぬる。」
響也が王泥喜から渡されたティッシュで手を拭いている。
「でも、結局一番いいのはどれなのかわかりませんし・・・」
王泥喜が3本のローションを手に持ち、寝室の扉を足で蹴り開ける。
「とりあえず、使ってみましょうか。」
そういって、王泥喜はにんまり笑った。