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スラム街の女、ギャングスターを目指す エピローグ

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 イタリアの街に朝が来る。
窓から差し込んだ光が、ベッドに寝ている二人を照らした。
その光に、ジョルノはゆっくりと目を開ける。
すると自分のすぐ隣で寝ていた黒髪の男と目が合った。
「おはよ…」
まだ寝ぼけている彼は、普段は帽子で隠している短い黒髪の生えた頭をぼりぼりと搔いた。
「ええ、おはようございます、ミスタ。」
ジョルノは彼の腕から抜け出すと、ベッドの横に放られたワイシャツを身にまとう。
「おいおい、もう着替えるのかよ。」
ベッドからミスタの不満そうな声が聞こえた。
「ずっと裸でいると、何されるかわかりませんからね。」
そういって笑うジョルノの顔は、昔のものよりもずっと柔らかいものだった。
「それより、今日は朝の仕事終えて見に行くんでしょ?」
てきぱきと身支度をするジョルノの横で、ミスタもあくびをしながらベッドから起き上がる。
「ああ、今日はその仕事終えたら外での仕事はねぇだろ?外回りはフーゴがやってくれるって言ってるし。」
あの事件の後で、なんとかチームに引き戻す事が出来たフーゴも、今ではちゃんと仕事に復帰している。
「はい。彼が戻ってきてくれてよかったです。」
ジョルノはいつもの服に着替えると、小さく伸びをした。
「しかし、僕ってこういう黒い服しか着ないからわからないですね。僕って白に合うでしょうか。」
鏡の前に立ってジョルノがぼやく。
「何言ってんだよ。黒のタキシードは俺だろうが。白のドレスはお前だよ、ジョルノ。それにお前は細いから何でも似合うって」
ミスタはそういって、仕上げのいつもの帽子を被り銃をホルスターに仕舞った。
「でも出来れば、あまり派手な式にはしないでおきたいですね。」
「いやぁ…トリッシュがそうはさせねぇだろ。」
ミスタが部屋を出るのにジョルノが続く。
「…あ、そうだ。」
ドアを閉めようとしたジョルノの手が止まった。
「ミスタ。その後でいいので買い物行きましょう。他にも見たいものがあるんです。」
「見たいもの?」
指で車のキーを弄びながらミスタが振り返る。
「すぐそこのモールに行きたいんですよ。」
「なんだよ。買い物なら昨日…」

「…ベビー用品が見たいんです。」

ジョルノはお腹をなで、小さく微笑んだ。
「…マジ?」
「ええ、大マジですよ、パードレ。」

僕にはギャングスターになることのほかに、もう一つ夢があった。
死ぬ前に、自分を本当に愛してくれる人とめぐり合いたい。
あの掃き溜めのようなスラム街で、僕がそれを夢見ていた。男を装っていた僕の、唯一の女としての願い。
そして僕は今、その夢の中にいる。どうか子供のときからのこの夢が、ずっと終わらないように
そして今僕に宿ったこの命が、僕と同じように、素敵な人に出会えるように。
そっと祈りをこめて。